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嚥下反射潜時に対する鍼の効果

鍼灸師会のセミナーで関 隆志先生の嚥下に対する鍼のエビデンスを関お聞きした。

以下はその時の資料の抜粋です。

(10mmの鍼の刺入に抵抗のある患者さんには、0.6mmの円皮針でもよいですね。)

 

北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター サイクロトロン核医学研究部 研究教授 涌谷町国民健康保険病院 技術参事

関 隆志先生の講演


講演タイトル:【Evidence Based Clinical Acupuncture】

経穴を刺激するとどのような効果があるかは、書籍によって異同がありますが、何が正しいのかは誰にも分からないのが現状です。ある経穴に鍼治療をしたときの動脈の血流量を測定し、そのエビデンスを伝統的に言われてきた経穴の効能と合わせて検討することで、経穴の効能をさぐる研究手法をご紹介します。

また、大規模な鍼治療研究で、腰痛、変形性膝関節症、緊張性頭痛、片頭痛の患者に経穴ではないところに針先を浅く刺すだけの刺激をおこなうと、鍼治療をしなかった群に較べて有意に痛みが軽減することを示しました。経穴以前に皮膚そのものがこのような効果を出すことを示唆するものです。

こうした鍼灸治療研究の最前線をご紹介します。

下肢への皮膚刺激で脳血管障害患者の嚥下を改善


 脳梗塞または脳出血の後遺症で誤嚥の既往のある41名の患者に対し、左右の下肢のツボ(足三里と太谿)に0.16mmの鍼を10mmの深さに15分刺入しする。

 

   嚥下反射潜時を刺入前と鍼を抜いた30分後に、それぞれ唾液と血漿を採取し分析測定した結果、鍼灸治療後30分に嚥下反射潜時は有意に改善したことがわかった。(この効果は最大7日間持続した。)

 鍼治療の前後において唾液中、血漿中のサブスタンPに有意な変化がなく、鍼治療による副作用はみられなかった。

 

治療の効果を嚥下造影で評価した。

誤嚥の既往のある32名の脳卒中後の患者を無作為に14名の通常ケア群と16名の鍼灸治療軍に割りつけた。鍼灸治療は週3回、4週間行った。嚥下造影は研究開始と4週間後に行われた。1秒に30フレームの画像を撮り、画像処理ソフトを用いいてフレーム毎に精査した。

 

鍼灸治療群では、水、流動食、固形食のいずれにおいても4週間の治療後に有意に咽頭残留が減少し(図3−1)、有意に誤嚥が減少した。(図3−2)